


鎌田幹子が美術を担当するということで手伝いに行った。これは私が25日に撮影した完成前の舞台である。27日の本番の舞台では写真の垂れ幕が隠すように配置されていて残念だった。具体的な何かを撮影している写真が何の脈絡もなくそこにあるという方が天狼星堂の組み立てられた舞踏には丁度良いのではないか。
私はこれまでZONEシリーズを何度か見てきたが、今回初めてZONEとは何なのかの手がかりを見た気がした。"気がした"というのはやはり完全には見えるものではなく、だからそれがZONEなんだと思っている。曖昧であるが。
今回は演者同士の関わり合いの輪郭がよく見え、直感的な説得力があり一瞬飲み込まれそうになった。そしてきちんと組み立てられた舞踏の構造の奥に強いメッセージのようなものがあるのを感じた。これは天狼星堂ならではの奥ゆかしい発言の仕方のように思えとても感動した。
やはり大森政秀は色気がある。深夜の街の公園で独り優しく踊っている浮浪者の香り。そして彼には見える知恵遅れの妖怪が。横滑ナナの純度100%の幼児性は真実であり必然である。が少し強すぎる。もう少しだけこちらを気にして恥ずかしい顔を見せて欲しい。
大倉摩矢子とワタルの会話がちゃんと見えた。でも滑舌良く聞こえたのはセリフだった。ハッとするほどの生々しい会話ではなかった。相手をどうにかしてやりたいと思うほどの肉の引力が見たい。もっと不安定でいい。壊れそうなぐらい相手を感じ、もう立っていられないほどに。
そして怖くなるほどに存在感のない小林友以のコートを着た地縛霊が新鮮だった。何かやりそうで何もしない。いやただ単に何もできないのか、それともできるのにあえてしないのか。そんなことを思ってみているとだんだん怖くなってくる。不思議な魅力だ。
ここまでくるとこちらも欲が出てくる。ええもんを見るともっとええもんが見たくなる。
もう舞踏でなくていい。もう芸術でなくていい。あまり強くなりすぎると声が聞こえなくなる。本当に本当に見えないぐらいに小さな声がある。私はその小さな声を申し訳ないと思いながらも踏み潰して何とか生き延びている。私はその声を忘れてはいけない。そんなことを帰り道に考えた。
天狼星堂舞踏公演 域 -- ZONE 2009 --
『肉体という事件の ただ中で』
構成・演出◎大森政秀
出演◎大森政秀 大倉摩矢子 ワタル 横滑ナナ 小林友以
照明◎神山 貞次郎
音響◎秦 宜子
舞台美術◎鎌田幹子
開演:12月26日(土)19:00・27日(日)18:00
会場:テルプシコール