ベートーヴェンの言葉「ため息」


「目を開けば、わたしはため息をもらさねばなりません。
 わたしの見るものは、わたしの信仰とは反対のものばかりだからです。

 そして、音楽が、あらゆる知恵や哲理よりも、
 はるかに高い啓示であることを知らない世間を軽蔑せざるを得ないからです。

 音楽は新たなるものを創り出す力を与える酒であり、
 わたしは、人間のために、このすばらしい酒をしぼり、
 彼らの心を酔わせるバッカスなのです。

 そして、人間は再び、その酔いから醒めたときには、
 そのかわきを医するための、あらゆるものを求めるのです。

 わたしには一人の友達もなく、一人で生きてゆかなければなりません。

 だが、わたしは、わたしの芸術が、他の芸術家よりも、
 はるかに神に近いものであることを、十分に知っています。

 わたしは、何の恐れもなく神と交わり、常に神を認め、
 神を理解しています。

 また、わたしは、わたしの音楽が決して不幸な目にあうだろうとは思いません。
 このことを理解できる人は、そうでない人が悩む、あのすべてのみじめさから解放されるにちがいないのです。」

1810年5月28日
ベッティーナ・ブレンターノから、ゲーテにあてた手紙の中で、ベートーヴェンの言葉として書き送った一節である。

「ベートーヴェンの言葉」津守健二 P400-P401 より抜粋



March 18, 2008