長谷川等伯の松林図屏風を初めて見た。
完璧。
隙だらけで隙がない達人の域。
たとえば、横山大観の絵も同じように完璧だが、
今ひとつ好きになれない。
強すぎて、その気迫が押しつけがましく感じる。
そして体が硬い。
等伯の松林図は、緊張感を持った脱力である。
無意識と意識のバランスが絶妙で、
描くときの呼吸の乱れまでもが必然であるかのような。
不安定でいて、とてつもなく安定している。
一瞬、しかし永遠。
走り書きのように、
あの大画面を把握している。
近寄って筆跡を注意深く観察してみても、
墨の擦れ一つ一つに意味があって繋がっている。
細部は細部同士で関係が成り立っていて、
それが集積され全体を構築しているのだが、
一歩引いて見ると、
全体として一つの大きな意志のようなものを持っている。
部分と全体の矛盾がまるでない。
奇跡的に自然物としての絵画である。
とにかくこれは奇跡です。
January 12, 2007